お屋敷

「…」
「お前も来なさいルーホ」
「はい」

繋いだままの手は白い手袋をしていて感触は判らないけれど、人にしてはとても冷たい手だったけど、背中を押す主人の手よりは怖くなかった。

「眠っている筈だから、起こしてこよう。君は、此処でお茶でも飲んで待っていておくれ」
「はい」

主人が自ら入れたお茶はとても甘くて暖かかった。
執事である筈の男は私の目の前にクッキーを持ってきてくれた。
執事の男は悲しそうな顔をして此方を見ている気がして、首を傾げると何でもない、と言いたげに首を振るだけだった。
主人の男がクリスたちを呼びに席を外している。
暖かいお茶は冷え切っていた身体を温めてくれたけど、夜中に近いこともあってだんだん眠くなってきて、両目を擦って必死に目をあけていた。

「…クリス達が…来たら…起こし…」

最後まで言えないまま机におでこを乗せたまま深い眠りに付いた。
夜遅く起きていることなんてクリスマスのときだけだから慣れていない夜更かしはあっという間で私は睡魔に襲われた。




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