孤高の天使



「なんで…またあの夢……」


こう思えるのも初めてかもしれない。

だって前は毎日あの夢を見ていたから…

来る日も来る日も。


夢を見ない日などなかったのに……




だけど…―――――

ぱたりと夢を見なくなったのはそう…あの日。

魔界へ堕ちてきた日からだった。

夢の中にラファエル様が現れた次の夜からなくなったのだ。

何でかなんて分からないけど、あの日から頬が涙で濡れる感覚もないし、夢にうなされることもない。




だからだろうか……

久々に感じるこの胸の苦しみと圧倒的な悲しみに胸が押しつぶされそうなのは…




私…どうしていたんだっけ……



あまりにも昔の事のように思えて、今までどうやってこの感情をやり過ごしてきたか思い出せない。

そうと分かった瞬間、この胸の痛みを“怖い”と思った。

ボロボロと流れ続ける涙は今ごろは止まっているはずなのに、未だに頬を濡らして止まる気配がない。




誰かに助けてほしくて。

強く抱きしめてほしくて…



誰か…―――――




ラファエル様………



「ッ…!」


頭の中で呼んだ名に息を飲んで戸惑う。

咄嗟に求めた人は“本来ならば相容れない者”




< 128 / 431 >

この作品をシェア

pagetop