孤高の天使



複雑に描かれるこの陣は高等な術から生まれるもの。

瞬時にそれを察知したフェンリルは陣から飛び立とうとしたが、すでに遅かった。




ヒュッ…――――

完成した陣から伸びてきた光る弦がフェンリルの足を捉えて陣へ縛り付ける。

余程締め付ける力が強いのか、フェンリルは苦しそうに息を吐く。

そして、その光の弦は自由を奪うだけでなくフェンリルの魔力をも蝕んだ。

フェンリルの魔力を吸い取るたびに、一層光る弦。




ガクッ……




「フェンリル!」


遂には片足をつき、苦しそうにするフェンリル。

それでも倒れないのは気高い魔獣だからだろう…

しかし、それにも限界があった。

体に巻きつく弦が更に増え、弦を引き千切ろうとするフェンリルが空を仰ぐ。



月に向かって吠える狼のように…

限界まで躰を起こし、苦しそうな声が闇の中に響いたかと思えばフッとフェンリルの意識が途切れる。

そして、大きな躰は重力に逆らわずに倒れて行った。



ゆっくりと―――――



バンッ……

陣に倒れる大きな躰。

当然、背に乗っていた私も陣に叩き付けられた。

体中に走る衝撃と痛み。




フェンリル………

うっすらと目を開くと、そこには城下町で買ってきた品々が散らばっていて。

その先には、小さな姿になったフェンリルが小さくうずくまっている。





「フェ……リ…ル……」


ピクリとも動かないフェンリルに、手を伸ばす。

しかし、濃くなる闇と薄らぐ意識に、伸ばした手は届かないまま力なく落ちた……




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