孤高の天使
フフッと不敵に笑みを深めて、艶やかな唇が動く。
「どう?ここは眺めが良いでしょう?」
不意にそう言って眼下を見下ろすアメリア。
それに誘われる様に視線の先を追えば……
「ッ……」
眼下の光景に息を飲んで躰を硬直させる。
いや…この先に“下”などあるのだろうか…
それほどに深い闇がそこにはあった。
そう、今私たちがいる場所は魔界中心部の端。
闇の滝だった―――――
魔界中心部から溢れる様に流れ落ちる闇。
下を見れば吸い込まれそうなほどの黒に思わず足がすくむ。
飲み込まれそうで怖い…
咄嗟に身体が逃げを打つが、体は身動き一つできない。
そこでようやく自分の状況に気付いた。
十字架にはり付けられ、手は頭上で、足も弦で拘束されている。
体が痛みを感じるのは、十字架に巻きついている弦の棘が手足に深く巻きつけられているからだろう。
それと分かっていても、身じろぎをして闇から逃げたいと体が足掻く。
棘が肌に食い込み、血が滴る。
「何でこんなこと…」
恐怖に身をすくませながら冷たい表情でこちらを見据えるアメリアに問う。