孤高の天使
「だが、君の命には代えられない」
離れて行ったラファエルが私の頬を大きな手で包み込む。
何も言わずにキュッと口を結ぶと、薄暗い部屋でも煌めくアメジストの瞳が揺れる。
「分かってくれ…イヴ。俺は君を失うのが怖いんだ」
震える声で告げられた言葉が胸の奥深くに突き刺さる。
もし逆の立場だったなら、私だって怖くて不安でたまらないと思う。
だからこそ、これ以上のわがままは言えない。
「分かり…ました……」
胸がギュッと押しつぶされる様に苦しくて、口にした言葉も小さくなる。
私が承諾したことに安堵したのか、頬にあてられた手から緊張が解ける。
それがなんだか寂しくて、ラファエルの胸にそっと寄りかかる。
「またここへ戻ってきます」
「あぁ…」
耳元で響く低い声が心地良く、辛いと訴えていた体が軽くなった気がした。
そして、ラファエルを見上げ、自分でも不思議なくらい穏やかに微笑む。
「またラファエル様のもとへ帰ってきますから。その時は約束を守ってくださいね」
「分かった」
ラファエルは一瞬目を見張った後、嬉しそうにそう言った。