孤高の天使
深淵よりも深くて濃い闇の中―――
右も左もなく何も見えないはずなのに、闇の球体の中心に確かにラファエルがいる。
そう感じるのはこの闇の球体の中にいるからだろうか。
ここはラファエルの悲しみと絶望に満たされている。
ラファエルの悲痛な叫びが闇に溶け込み、私の体に流れ込んでゆく。
その想いに、悲しみに、絶望に触れて息が詰まりそうなほど苦しかった。
闇を通して伝わってきたのはただひたすらに深い悲しみだけだったから。
同時にラファエルがどれだけ私を愛してくれていたかが伝わってきた。
“好き”すら超えるその想いは“愛”というより依存。
まだ全ての記憶を取り戻したわけではないから、何故ラファエルがこれほどに私に依存していたのか分からない。
けれど、その依存が大きいほど抱える闇は増幅した。
時間にして数秒後――――
否、数分が経った頃だろうか、音もない闇の中にいると時間の感覚が正確に働かない。
しかし、ラファエルの深い悲しみを知るには十分な時間が経った頃。
闇に染まっていた空にぽつぽつと光の斑点ができ、そこから光が差し込む。
その斑点は闇の球体を溶かすように広がってゆき、曲線にそって闇が霧散していった。
そして目の前の光景を見て息を飲んだ。
「ッ……そんな……」
そこには確かに湖や森があったはずなのに、今目の前にあるのは荒廃した土地だけ。
闇の球体を象ったようにできたクレーターは地面を大きく抉り、湖は丸ごと飲み込まれ、森の木々も皆枯れ果てていた。
そしてその中心、クレーターの底にラファエルはいた。