孤高の天使
「す、すごい屋敷ですね。」
「父さんと母さんがああいう家が好きなんだよ。」
はぁ…と頭を抱えてそう言うルーカス。
顔に、あの家に帰りたくないと書いているようだった。
「悪魔でもあのような彩りの家に住まうんですね。もっとこう…落ち着いた雰囲気のたたずまいだと思っていました。」
ルーカスの気持ちを察しながら苦笑いを投げかける。
「うちは変わり者だからな。悪魔の中でも歴史のある貴族のくせして俺なんかを養子に入れるし。まぁ俺は城の一室にも部屋があるからほとんど帰ってないんだけどな。」
「ルーカス……養子って?」
聞きなれない言葉だった。
「養子ってのは、よその子を自分たちの子供として受け入れるということだ。」
派手な屋敷の上を通りすぎながらまた森の上を飛ぶ。
「じゃぁルーカスはお二人の間に生まれた子供じゃないということ?」
「あぁそうだ。俺はアルフォート家の者ではない。父さんと母さんは魔界で行くあてのない俺を拾ってくれたんだ。」
行く当てのないって………
そこでふと気づく。
「魔界ではどうやって悪魔が生まれるんですか?」
ルーカスがアルフォート家の子供ではないというならば、ルーカスは誰の子供なの?
魔界にも聖なる母樹のように、子を宿すための樹があるのだろうか。