有明先生と瑞穂さん
「ほら、瑞穂さんって有明先生のこと好きって言ってたじゃない」

「ただのファンですって・・・」


興味なさそうに手元の仕事に目を戻すが小浜は構わずに話を続ける。


「だってあの時すごいショックを受けた顔をしていたから・・・。
誤解を解いておこうと思って。

別にそういう、変なことなんてしてないのよ」

「そうですか」


――知ってる。わかってる。



「どうしてわざわざそんなことを・・・?」


なんともないなんて言いながら自慢したいのだろうか。


「だって私、瑞穂さんくらいしか個人的に話してくれる生徒いないから・・・。
瑞穂さんにまで嫌われちゃうのは嫌だもの」

「・・・・・・! 小浜先生・・・」


その言葉に自分の中に渦巻くどす黒い感情にまた嫌気がさした。


(私・・・またひどいことを・・・)


それでもやっぱり許せなかった。


『彼女がいる』と知っていてあんなことができるなんて――・・・。



「瑞穂さんのおうちって有明先生のおうちと近いのね。
私のうちもあのあたりなのよ」

「そうなんですか」

「・・・瑞穂さんももっと積極的にアプローチすればいいのに」

「え・・・?有明先生にですか・・・?」



やっぱりバカにしてる?


(私なんかがアプローチしたって小浜先生にはかなうわけないって言いたい・・・?)


また捻くれたことを考えてしまった。

慌ててその考えを取り消す。



(きっと小浜先生は表情じゃわかりづらいから今までも勘違いされてきたんだよ、きっと。
似たような経験した私がそういう根拠のない考え持っちゃ駄目だ!)
< 1,090 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop