有明先生と瑞穂さん
***




「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」



瑞穂は一人、人気の少ない校内を走り回っていた。


(迂闊だったッ――!!)



柄の悪い上級生に絡まれて以来、瑞穂はなるべく一人にならないようにしていた。


最近ではちょくちょく知らない生徒から嫌味を言われたり、些細なことだが嫌がらせを受ける。

想像以上に有明先生はモテるのか・・・と思っていたが、近頃は女子だけでなく男子からも同じようなことをされるのだ。



『問題のある生徒』として浮いてしまった瑞穂は格好の標的だった。


小馬鹿にしたり、嫌がらせをしたり


それを楽しむ人間にとってもはや理由なんてどうでもよかった。


『相手は悪だ』と自分を正当化させて、

刺激を求めて、おもしろ半分で、ストレス解消に――



人は無意識の中で誰かを貶めることによって何かに満たされる――。



その標的が、たまたまきっかけをもつ瑞穂に向いただけ。





数分前――


部活のない瑞穂は帰宅前に図書室に寄り、用を済ませて廊下を歩いていた。


今日は深江と帰宅する予定だったので、深江には布津の部活を見学しながら待ってもらっている。


ただ、廊下から外まで――


それだけだった。



今までよっぽど身の危険が感じるほどの嫌がらせをされたわけでもないし、人も少ない。

安心していた。




「ねえ」



ぼーっと廊下をゆっくり歩く瑞穂に誰かが後ろから声を掛けた。
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