有明先生と瑞穂さん
突き飛ばされた衝動で2mほど滑り、持っていたノートが散乱する。

自分を突き飛ばした人間も覆いかぶさるように倒れこんだ。


「え?!え?!な、何が・・・」


覆いかぶさった人物の隙間から見えたのは、さっきまで自分が立っていた位置。


そこには粉々になった花瓶のようなものが散らばっていた。


「え――・・・」


すかさず上を見ると人影が窓からサッと消える。





(・・・・・・・・・あの子だ・・・!!)


姿は見えなかったのにすぐにあの細い目が頭をよぎった。




「・・・っつぅ・・・!!大丈夫か?!」

「あ・・・」


落ちる花瓶にすぐに気づいて助けてくれたのは、また口之津だった。


「え・・・どうして・・・」


瑞穂の足がガクガクと震える。

口之津のシャツを掴むが、力が入らない。


真っ青になって震える瑞穂を見て口之津はその体をぎゅっと抱きしめた。



「何があったの?!」


ノートを写し終わりあとから来ていた有馬と布津が騒ぎを聞きつけバタバタと走ってくる。


「・・・・・・!」


瑞穂が口之津を抱きしめている――。

有馬はその光景を見て動きを止めた。


「うわっ!!何だアレ?!」

布津の声にハッとして割れた花瓶に気づく。

布津が駆け寄る後を追って有馬も二人に近づいた。


「何が・・・」

「おい祥子!!晴を頼む!」

「えっ?!」


口之津は抱きしめていた瑞穂を無理に立たせるとそのまま有馬に押し付ける。

うろたえながらも渡された瑞穂を支えると、自分の力では立つこともできないのか瑞穂はヘナヘナと体重を有馬に預けた。
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