有明先生と瑞穂さん
国見と話せば調子を狂わせられる――。

構っているだけ時間の無駄だと国見の横を通り過ぎようとしたが、それさえ許されず行く先を国見の手で遮られた。


「そうねェ、確かにアタシはお説教しに来たのかもしれないわね。
だってわかんないんだもん。
小浜チャンが結局何をしたかったのか」

「何って・・・」

「だってやり方が強引じゃない。結構無理があるわよ。
うわべだけでも有明と付き合えて嬉しい?」


国見の問いかけにプイとそっぽを向く。


「・・・ただ瑞穂チャンを貶めたかっただけなんでしょ?」


しかしこの言葉には無視できず、キッと国見を睨みつけた。


「違うわよ!!」


国見は驚いたようなリアクションをしてみせるが、それも嘘っぽい。



「ええ、確かにあの子を貶めたい気持ちはあるわよ。
あんな子・・・大ッ嫌い!
何にも取り得なんてないくせに有明先輩に気に入られて・・・

そうよ、それが気に入らないの!

言ってるじゃない!

言ってるじゃない、ずっと・・・


私は有明先輩が好きだって!!」



まるでずっと溜め込んでいたかのように一気に吐き出す気持ち――



有明はずっと信じてはくれなかった。


この気持ちだけは本物なのに。


「じゃあ・・・どうして・・・」


小浜の気持ちを知ってか国見は眉をしかめて問いかける。


「あんな子と違って、私は自分のことには自信があるもの。
多少強引だって、きっかけさえあればそこから振り向かせることができるもの。
なんだってできるもの・・・。

そうね、貴女の言うとおりだわ。

あの子を貶めたいっていうそういう欲さえ出さなければ成功していたかもしれない」


疲れたように笑う小浜の横顔を、国見は哀れみの目で見つめる。
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