有明先生と瑞穂さん
『祥子』


あの口が名前を呼んだ。


それだけですごくイライラする。



(何なのよ!)



何かが思い通りにならないようなそんなもどかしい、焦燥感のようなもの。

だけどそれが何なのかわからずに、ただひたすら意味のわからないものにイラつきを感じていた。






すれ違うたびに、何か言いたそうな顔をして、結局何も言わずに通り過ぎる。


(言いたいことがあるなら言えばいいじゃない)


――晴子とは気軽に話せるくせに。


一瞬そう思って、まるで自分が嫉妬してるみたいで嫌になり打ち消す。


(いや、あんな男とは話したくないわ)



そう

思っているのに―――





「お、おい。しょ・・・有馬」



「・・・何よ」




ようやく話し掛けられた、と感じる。

(まるでウチが待ってたみたいじゃない。馬鹿みたい)


(『有馬』って何よ。何言いなおしてんのよ)


(もっと普通に呼べばいいじゃない。
何緊張してんのよ。
前は普通に話してたくせに)




ウチの何が怖いってのよ!
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