剣舞
可も不可も答えられず、彼女は静かに、彼の腕に指さきを触れた。


それを受けて、背後から回された腕に、更に力が込められる。

抵抗など、出来なかった。


頭が、抵抗する事を許さなかった。

従え・・・


自分の望みに従えと・・・


甘言をはく、自我に惑わされ、酔いしれて、彼女は、彼の腕に身を委ねる。

体を返し、男に向き合うように、その背を抱き返し、瞼をとじ、心臓のリズムに耳を傾ける。


男の指が、彼女の顎をもちあげ、二人は互いの半身に腕を絡めて静かに口づけを交わした。

全身がとろけるような感覚に、オリビアの体が崩れ、傍に、たてかけておいた長剣が、音を立てて倒れた。


その、金属質な音が、オリビアを現実に引き戻した。


軽はずみな事をしてしまった!!
自らの立場も、状況も忘れほうけた自分を恥じ、赤面した。

慌てて、袋から少し飛び出した剣を収める。

そんな、オリビアの表情を楽しげに見ていたヴァイスだが、彼女の剣の彫刻をみて、顔色を変えた。


「オリビア。それ・・
その剣・・・」


 
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