6 L O V E .
だけど、伸ばした腕は届かなかった。
彼女がそれを制したから。
「…あたしは、いいから。気持ち…ちゃんと伝えなよ」
涙に濡れた笑顔がそこにあった。
その笑顔には何どこか突き動かされるものがある。
「あたしは、いいから」その意味は、俺への気持ちなのか、今の涙なのか分からなかった。
最後に彼女は、「がんばれっ」と俺の胸を拳で押して、改札へと駆けていった。
俺は、しばらく行き場のなくした手を見てボーッとしていた。