S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
俺は、あの疑問を感じた日から今まで、色んな事を調べた。

人は、何に恐怖を覚えるのか?
どういうお化け屋敷が怖いと思えるのか。

参考の為に怖いと評判のお化け屋敷に行ってみたり、恐怖のメカニズムを理解したくて心理学書を読んだり。

やっと納得の行く結果に辿り着いた頃には、この遊園地で実際に働いてみたいと思ったのだが...。

「申し訳ないけど、ウチのバイトは高校生不可なんだよ。」

内田と名乗った面接の担当者は、バツが悪そうに頭を掻いた。

「電話でアポをとった時は、そんな事一言も言っていなかったじゃないですか?」

食い下がる俺に、内田さんは困った様に腕を組んだ。

「う~ん。アポの時点でそれを伝えていなかった非はこちらにあるが、決まりは決まりなんだよ。」

さっきから、同じ様な話が堂々巡りするばかりだ。
何回か押し問答をしたが、それが覆る事は無いと理解した俺は「じゃあ」と前置きをして、カバンからA4サイズの茶封筒を取り出した。

「これを読んで見てください。」

内田さんは、あっけに取られた様に封筒を見つめている。
俺は、構わず言葉を続けた。

「一人の客として言わせて頂くと、ココのお化け屋敷は改良の余地があります。人は何に恐怖するにかと、その為にどういうお化け屋敷にすべきか、レイアウト案をまとめています。」

封筒から資料を取り出し、内田さんに差し出す。

「働けないなら、せめてお化け屋敷の改革案を検討して頂きたい。絶対に良くなりますから。」

俺は、力を込めてそう言い放った。

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