S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
取り敢えず、安浦を俺のうちまで連れて来た。
女の涙は、未だに対処法が分からない。
ティッシュを渡すと、俺はキッチンの方から様子を伺っていた。
ひとしきり泣いたのか、大分呼吸は安定している様だ。

「落ち着いたか?」

そう言って、テーブルに麦茶の入ったコップを二つ置いた。

「はい、すみません。」

何故か正座の安浦を微笑ましく思いながら、俺はベッドに腰掛けた。

「全く、公衆の面前で泣くやつがあるか。」

腕を組むと、不機嫌よろしく、安浦の顔をジロリと睨んだ。

「...すみませんでした。」

素直なのか何なのか、ちゃんと謝罪を出来るのはこいつのいいところだと思う。

「妙な噂が立って、あのパン屋に行けなくなったらお前のせいだからな。」

だから、必要以上に苛めたくなるんだよな。
俺は、「すみません」と繰り返す安浦を見つめた。

あの時安浦は間違いなく『平畠さんの事が分からない』と言った。
真意は分からないが、俺と同じ様な思いでいたと言うことだろうか?

またすみれさんの言葉が甦る。
『他人の事を知りたいと思った時点で、その人の事が気になっている』
その言葉を借りるなら、安浦も俺に少なからずの興味を持ってくれていると言う事か?

俺は、組んでいた腕を解くと、小さくなっている安浦に問いかけた。

「で?お前は、俺の何を知りたいんだ?」

意外そうに顔を上げる安浦に、俺は促すように顎を上げた。






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