S的?彼氏の思うコト ~平畠 慎太郎side story~
「それと、二人の時は『平畠さん』は止めろ。」

コイツの気持ちが分かった俺は、腕の中にいる安浦にそう言った。
頭では分かっているが、安浦のほうがどうしても、仕事の雰囲気が抜けないからだ。

「急に言われても...。」

その目線は、何故か不安に揺れている。
何か気に障ったのか?

少し考えて、やっと気が付いた。
俺は、相手の気持ちを知りたいばかりで、コイツにちゃんと言葉で言ったか?
(まぁ、ここまで色々しといて何とも思っていない訳が無いのだが...)
俺は、そんな安浦の不安を振り払うように腕に力を込めて私を抱き寄せた。

「俺達付き合うんだろう?ちゃんと言えよ。」

『好き』...とは言えず、何だか先走った言い方をしてしまった。
少し悔やむ俺の顔を、驚いた表情で見つめる安浦。

「好きです。慎太郎..さん?」

そのままの表情で、安浦はそう呟く。

「お前は...何で疑問系なんだ!ちゃんと言えちゃんと!」

折角ちゃんと『好きです』と言われたのに、語尾のほうが気になって、思わず叫ぶ。

「すみません!でも、いきなり呼び捨ては恥かしいので!」

必死に弁明する姿は、いつもの安浦に戻っていた。
何でこんなに重要な所で抜けているのか。
俺は、溜息をついた。

「分かった分かった。呼び捨てじゃなくてもいいが、慎太郎さんは止めろ。他人行儀感甚だしいから。」

大丈夫だから、と背中をポンポンと叩く。
安浦は度気を取り直した様に一息付く。

「慎さんの事、好きです。」

真っ直ぐ俺を見つめて言う姿。
今度は、ちゃんと聞くことが出来た。
俺は、嬉しさが込み上げて来るのが分かった。
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