しゃぼん玉。
それから写真のことを沢山聞いたの。
ご主人は有名ではないけれど、一部の人には凄く評判がいいのだと自慢してた。
その自慢してる時の表情が、母様が生きてた頃の父様に見えて、なんだかとても淋しくて。
気付いたらご主人に捕まってたの。」

ミルの話が止まった途端、湊はいくつかの疑問に頭を抱えて悩んでいた。
少し離れたところで遊んでいる陸の様子をちらりと見た後、湊は疑問をぶつけていった。

「何個か質問するから全部答えろよ。
とりあえず拒否権ないから。」

湊の言葉を聞いて、ミルは思わず笑った。

「なぁに、それ(笑)」

ミルが笑った直後、目の前に広がる穏やかな海は、少しずつ……荒々しくなり始めた。

ミルはその海から目を反らさず、たださっきよりも険しい顔で

「ごめんね。
マオが、私を探してる。」

と言うと、今にも嵐が来るのではないかというような海へ飛び込んだ。

湊は、すぐ顔を出すのではという思いを抱きながらしばらくの間待ってみたが、ミルが顔を出すことはなかった。




陽が傾いてきた頃、遠くで遊んでいた陸がお腹が空いたと訴えるので、陸を肩車して帰ることにした。


















ミルが海へ飛び込んでから海は落ち着き始めたが、湊と陸が帰った後、荒れていたのが嘘のような、いつもの優しい海に戻っていた。


――〝ニンゲン〟
それは、
大切なものを
この波のように
するりと奪っていく存在……――
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