課長さんはイジワル
第101話 酔っ払いはナゾじゃ
佐久間主任は私の手を掴んだまま、なおもズンズンと駅とは反対方向へと歩いて行く。

「佐久間主任!駅はあっちですよ!」

「知ってるよ」

「知ってるんだったら……って、もしかして、かなり酔ってます?」

「酔ってなんかないよ」

「酔っ払いはみんなそう言うんですっ!」

しかも、歩き進むうちに、繁華街は遥か後方に消え失せ、目の前には公園らしきものが見えて来る。

『特に、佐久間。あいつに気を許すな』

課長の言葉を思い出し、強く握られた手を力任せに振り解く。

茫然とした佐久間主任がクシャクシャと髪を掻き上げる。

「……私、帰ります」

「待てよ!」

踵を返し走り出す私の腕を佐久間主任がガッチリと掴む。

「離して下さい!」

「待てってば。何もしないからそんなに警戒するなよ」


何もしない?

そうなの??


佐久間主任の言葉に力が抜ける。

佐久間主任はどんな時だって、絶対、ウソなんかついたりしない。

抵抗を止めると、佐久間主任も手を離し、持っていたカバンを私に預ける。


えっ?
ちょい待ち。
カバン?
なんで私に?


「持ってて。それと、これも」


佐久間主任は眼鏡を外すと、これまた私の手のひらに乗せる。


なんで、眼鏡?

……ナゾじゃ。


首を傾げている私の前で、「これも」と言って、背広を私の頭にバサリと投げる。


ま、前が見えないよぉ!


慌てて、背広を頭から剥がし、腕に掛け直す。


酔っ払いって果てしなくナゾじゃ。


「佐久間主任?」

「3秒待って。ちょっと酔いを醒まして来る」

1秒後。

思いっきりノビをして駆け出した佐久間主任は「うぉぉぉぉ」と叫びながら噴水目がけてジャンプしちゃったんだ。








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