殺人カメラ


気を失っていた間、私は夢を見た。

暗闇に1人の女の子がうずくまっている。

「どうしたんですか?」

手を差し伸べようと近づくと「彼女」は顔を上げ、怯えた顔で私の後ろを見た。

私は後ろをむく瞬間に目を覚ました。



「やっと起きたの?」

「彼」はガラス越しに話しかけた。

…ガラス?

「何これ…」

透明だが確かにある壁を叩く。

「ふふふ…逃がさないためだよ」

「彼」は冷たく微笑む。

「なんでっ…」

私は美里…「彼」を睨む。
美里の姿をしているが何故か違うような気がする。

「はぁ?もしかしてまだ俺の事美里だと思ってんの?」

あざ笑うように吐き捨てる。

「ばっかだねぇ…美里はもうここにはいないよ」

「彼」は自分の胸を指す。

「どういう…事っ?」

「あはははははっ…美里は俺の物だっ…お前が奪ったんだ…」

「彼」は私を鋭く睨む。

「お前のせいだ…」

訳が分からないと言おうとすると、ガラスに刺さっているパイプからシューと音が鳴り始めた。

空気穴だと思っていたがガス管だったようだ。

「硫化水素ガスだよ…」

硫化水素?!いくら美術の先生だからと言って知らない訳はない。

「勿論知ってるよね?…綺麗にしねるんだよ?」

「頬が赤く染まり最も美しい死に方だと思うよ…喜びなよ…はははっ」

「そ…んなっ…」

私は落胆し、その場にへたりこむ。

「だけど、どうせ死ぬんだから全て教えてあげる…」

「彼」はへたりこむ私と目線を合わせるようにしゃがむ。

「俺の真実を…」



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