元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
身体に染み込むように伝わってくる温もりが、心地好いと感じられたからではない。
足音一つ聞こえぬ静寂が支配したこの階段で、心が揺らぐ。
包まれているのが気持ち良かった。
もしここが学校でなければ…
あたしは声もかけずにただ抱きしめられていたのだろう。
それくらい安心する優しい温度。
階段が一段下がっている故に感じる息遣いに、近付いた顔。
そう、恋人同士なら流れのままにキスしそうな。
どうして、この学校の段差は駅や大学よりも大きいのか。
また心臓が速くなる。
段差の大きさを呪う事も、己の恋人の存在も忘れ、気付けば一つの事を願っていた。
結界を張るなんて超能力はあたしにはないから…
どうか、暫く誰も来ませんように…