元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~


「北条先生!」


まさに手渡す瞬間に少女がやってきた。


馬場さんだった。


「おはようございます。」


彼女の目は彼の目をのみを射ていた。


「おはよう。」


「おはよう、馬場さん。」


「…おはようございます。」


馬場さんがこちらに微笑んだ。


「北条先生、今お忙しいですか?」


「今は…滝沢先生、これお願いしていい?」


彼と彼女の視線が一気にこちらに向けられた。


宜しく、托すような瞳と


宜しくお願いします、頼むような瞳。


「はい。
分かりました。
このプリントの纏めですよね?」


「そうそう。
悪いな。」


「ありがとうございます。」


「じゃあ、ここプリントだらけだから、向こうの机でいい?」


「はい。」


それから二人は並んで去っていく。


向こうを向く際、彼女が一度あたしを見た。


鋭いものでは無いが何者をも射ぬくような目線だった。


それはあたしが今までに感じた事の無いものだった。


< 30 / 410 >

この作品をシェア

pagetop