桜色の初恋
二日目


「お前さーちょっとは器用に出来ねぇのかよ?」


持っていた試験管を必死に洗いながら“桜”と名乗る生徒は後ろを振り返った。


黒髪ストレートの長い髪がゆさっと後ろに流れる。


「だって、試験管、ちゃんと洗ったことないんだもん」

「お前ななに小学生みたいな言い訳してんだよ。
家でかぁちゃんの手伝いとかしてないのか?」

「だって家では試験管なんて洗わないもん」

「ったく、ほんとガキみてぇだな」



“あたしにもなにか手伝わせてください”


洗い物の最中にそんなことを言ってくるからやらせてみるか、
なんて思ったのがそもそも間違いだった。


「大体なー。試験管二つも割るかよ」

ったく。


< 12 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop