幕末恋模様~時を越えて~



* * *

「わぁぁぁぁぁっ!!」


ドサッ。



「痛った…。どこだよ此処。」


落ちた衝撃でお尻を打ったのかさすりながらあたりを見回す。
目に入るのはコンクリートの地面でなく土。
家も木造建築ばっかりでまるで時代劇の撮影にでてくる建物ばかりだった。

木刀と鞄はあるな…良かった。
確か、神社の蔵の中にあった鏡に触れた瞬間に意識飛んだんだよな……。
本当に此処は何処だ?

そっと家の角から道を覗くと杏里は目を丸くした。


「時代劇の撮影…?」


杏里が見たのは着物を着てせっせと働く女性や袴(はかま)を履いた男性。
しかも刀まで携(たずさ)えている。

いやいや。
夢?これは夢なのか?
誰か夢だと言ってください。夢でもリアルすぎだろ。
ひょっとしてあの時鏡に吸い込まれてタイムスリップした?
まさかな……。

「あ、そうだ。ケータイ…」

ケータイが繋がれば現実。繋がらなければタイムスリップ決定、か?

現実であれと願いながらケータイの待ち受けを見る。


「わー…繋がらないよ。」

ケータイの待ち受けは砂嵐みたいな画面で電波もたってない。
しばらく放心していたが、思い立ったように呟(つぶや)いた。


「とりあえず着替えよう。」

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