幕末恋模様~時を越えて~


――屯所。


「土方さーん。只今戻りました。ついでに面白い物拾いました。」


屯所の玄関に杏里を降ろすと大声で叫んだ。
すると、廊下の奥から怒鳴りながら走ってくる奴がいた。


「総司!てめぇは毎回毎回…!何度言ったら…」
「もう、話を最後まで聞いて下さい。
誰も動物拾ったなんて言ってません。ほら、この子ですよ。」


そう言って、杏里を立ち上がらせる。
間近で見る土方は美形だった。
流れるような透き通った黒髪、切れ長の目に役者のような整った顔。
沖田も引けをとらない顔立ちをしているがまた違う。


そりゃ、女にモテるわ。
これで女ったらしって、最悪だな。
あ、ってか入隊できないかな…。
入隊できたら衣食住心配しなくてすむし。


「あんたが鬼の副長土方歳三。素晴らしいほどのど怒鳴り声だね。」
「なっ…!てめぇっ!!」


杏里のはっきりとした態度に沖田は笑いをこらえている。


「笑ってんじゃねぇよ、総司。なんで連れてきた。」


睨みやる土方に沖田は言う。


「だって彼女、木刀で真剣持った浪士三人を倒したんですよ?
それに俺の気配まで察知してましたし。」


それで土方さんにお願いがあるんですけど。と沖田は続けた。


「彼女を入隊させたいんですけどどうですかね。」
「駄目に決まってんだろうが!女が刀握るもんじゃねぇ。
本当にこいつが倒したのか?こんな細っこい腕で刀なんて握りゃしねぇだろ。」


一方、屯所内にいる他の隊士達は【沖田が女子を拾ってきた】という噂でざわついた。


「おい、総司が女拾ってきたってマジかよ。」
「あ、佐之さん。本当みたいだよ。」

ひょっこりと現れた佐之こと【原田佐之助】はニヤリと笑った。
それに答えるは背が低くまだ幼さを残した少年、【藤堂平助】


「しかも、土方さんと対等に渡り合ってやがる。」
「お、新八。へぇ土方さんと。とんだじゃじゃ馬姫だな。」


ワクワクした顔をしながら【永倉新八】は現れた。


「とりあえずさ、行ってみようよ。」


そう言って三人は玄関へと向かう。

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