左目のマスカット味

「…へ?」


陽くんは、あたしの高さまでしゃがみ、言う。


「その飴ちゃん、ひとつちょうだいっ」

あたしの持ってる、2つ入ってる飴ちゃんの片方を指さす。


「黄色とピンクどっちがいi「黄色っ」


そうか。黄色か。

そんなに欲しいのか。

しゃーないなあ、黄色あげるよ。




慣れた手つきで飴ちゃんの小さな袋を開ける。

「ん!」

黄色の方だけつまみ出し、陽くんに差し出す。


「あ!」

陽くんは大きく口をあけて、なにかを待ってる。

…すぐになんのことか分かってしまった。


あたしは、その口に黄色の飴ちゃんを入れてあげた。

陽くんの口が閉まったのを確認して、ピンクの飴ちゃんを自分の口に入れた。


「んっ!めっちゃ美味い! レモン味?」

「うん、…多分」


「俺 今日は持ってきてないけど、学校ある日は飴ポーチ持ち歩いてるよ!」

「そうなん? なんか意外っ」

「だから、月曜日の昼休み 吏彩と教室おいで!」





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