君と桜と

公園での優しさ

絢、新学期早々部活かあ。


えらいな。私は見習えないよ。
こんなあったかくていいお天気のお昼にのんびり家に帰るの、最高だもん。




帰宅部である奈緒はこうして一人で帰る事が多かった。


電車通学の多いこの学校では、奈緒のように駅と反対方向に帰る友達が少ない。
みんなで賑やかに帰るのも素敵だと思うけれど、一人で考え事をしながら歩くのも好きだった。






「うわぁぁーんっ」





公園の前を通り過ぎようとした時、泣き声が聞こえてきた。
幼い子特有の甲高く突き抜けるような声だった。



公園の中を見回すと、幼稚園生くらいの男の子が、この公園のシンボルである大きな木の下で一人、うずくまっていた。



どうしたんだろう。
お母さんいないみたいだし、声をかけてあげたほうがいいよね・・・　　





ぐずぐずと考えていると奈緒の横をすっと誰かが通っていった。
その人はまっすぐ男の子に近づいていく。