星の輝く夜に
夜空を見上げて


不意に、彼は起き上がると、


窓のところへ近づいた。


窓を開ける。


開けると同時に、冷たい風が部屋の中へ入り込んでくる。


春の季節とはいえ、まだ風は冬の冷たさだけを纏っていた。






しかし、窓の外から顔を出して見上げれば、満天の星空がそこに広がっていた。


珍しく澄み切って晴れ渡る空に光る星々を、彼は瞬きすることなく眺めている。


吐く息は白い。


頬に当たる風は刺すように冷たい。


それでも、彼は窓を閉めずにそのまま上半身を乗り出して、夜空を眺めていた。





「・・・あ」


一人、そう言葉を零す。


「流れ星・・・」


深い色の空に、一筋の光が駆け抜けた。


彼は微笑みながら、無数の皺が刻まれている手を、夜空にかざした。


何光年もの距離にあるはずの星に、手を伸ばす。


届かないことを知りながら、彼は幾度となく、それを繰り返していた。


< 16 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop