恋した私の負け(短)
「私は彼女の変わりにはならないでしょ?」
諭すように言う。
みるみる彼の表情が暗くなって、私を映す瞳が濁って、でも彼も私から視線を外さない。
「逃げんなよ、もっと頑張んなよ。じゃなきゃ本当に、他の男に盗られちゃうよ?」
「……でも、」
“自信ないかも……”
零れた彼の言葉に笑った。
心を鬼にして、自分の想いは完全無視して、私は何度も彼の背中を押す。
これが私の選んだポジション。
「自信なんて最初からないくせに、なーに格好つけてんだか」
手付かずだったフルーツパフェ。乗っかった生クリームが力なく頭を垂れていた。
きっと生温くて、下のアイスも溶けているだろう。
「大事なんでしょ、彼女が」
不味くなったパフェにスプーンを刺しながら、彼から顔を逸らした。