恋した私の負け(短)
「……格好悪、」
コーヒーを飲む彼に、聞こえるか聞こえないかのボリュームで呟く。
彼の後ろのガラス窓に映った仏頂面な私。ぶっさいく。最低。
「なにやってんの、滝(たき)」
「……要?」
久しぶりに呼んだ彼の名前。
驚いたようにカップを置いてこっちに視線をくれる彼。
こんなに彼を見てきたんだ。少しは考えてることだって分かる。……全っ然、分かりたくないけど。
「こんなことしても虚しいだけじゃん。私は、あの子じゃないでしょ」
自分でも笑っちゃうくらい抑揚ない声で彼を叱った。
視線を外せば私の気持ちを見破られてしまいそうで、苦しいけど、ずっと彼を見続けた。