一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》


「…あたしが家出したのは、豊さんと喜一お兄ちゃんと一緒にいる事が辛かったからなの」


ぽつりぽつりと話し始める。蓮さんは黙って聞いてくれていた。


「あたしが中学生の時、家族で旅行に行った帰りに交通事故にあったの。運良くあたしは助かったけど、二人は…死んじゃった…。」

あの時、自分が生きている事を呪った。どうしてあたしだけ生きてるのって…。

「あたしを引き取ってくれる家なんかなくて、たらい回しだったの。そんなあたしを、離縁していた豊さんが引き取ってくれた…」


喜一お兄ちゃんも、豊さんも…。あたしに沢山の愛情を注いでくれた。


「二人はあたしの大切な人。存在理由を見失っていたあたしを、本当の家族のように大事にしてくれた。だからこそ、二人の傍にいるのは辛かった。あたしが病気だってわかってから…あたしよりずっと辛そうな顔するから…」


豊さんが一人で泣いていた事、喜一お兄ちゃんが一生懸命あたしの病院を探してくれていた事も知ってる。

「…あのまま二人の傍にいたら……傷つけるだけだもの。それに…そんな二人を見てるのが辛かった…」


だからこそ……。
あたしは二人の傍から離れた。




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