一番星のキミに恋するほどに切なくて。《旧版》


―約束…果たせたね…

「…お前が…隣りにいない」


一緒に見るって…約束しただろ…。でも…お前は隣にいない。


―いるよ…

「…俺には見えない…」

―ちゃんといる

左手に温もりが触れた。優しい温もりが…今まで探し続けても見つからなかった温もりが…。


「…夢…月…」

隣を見ると、いるはずのない愛しい姿があった。

夢月は俺の左手に自分の左手を重ねていた。


―蓮…

「…っ…夢月!!」

夢月を抱きしめた。確かに此処にいる。


やっと…触れる事が出来た。やっと……。


―蓮…愛してる…

「愛してる…夢月…」


どれくらいそうしていたのだろう。出来る事なら…。


「ずっと傍に…」

朝、目を覚ます時も…。
食事をとる時も…。
幸せな時間も…。
眠りにつく時も…。

それがたとえどんなに苦しい時間でさえも…共有して生きていきたい。


―あたしは傍にいる…
蓮がいつか…あたしから解き放たれて、一人でも前に進めるようになるまで…


「…お前無しじゃ…もう無理だ……」

こんなにも愛している。たった一秒さえ離れたくない。


―蓮…泣かないで…蓮は…一人じゃないんだから…


「…いらない…夢月がいればそれでいい…」


―違うよ…蓮…

「違わないだろ…」

―それじゃあ蓮は…ずっと前に進めない…

「ならそれでもいい…」

―蓮……

「夢月…」

夢月の体が透けていく。消えていく。





< 168 / 204 >

この作品をシェア

pagetop