君を忘れない
駅に着き、たくさんの人が電車から降りる。

急行が止まる駅とあって、人は多く、いつでも駅周辺は賑わっていた。



改札を出て右に曲がり体育館へと向かおうとすると、外の空気が涼しく、夕空は夏とは違った色をしていて、九月になり秋が一気に色濃く出てきたことに気付いた。


「あれ、二人一緒な電車だったんですね」


その声で後ろを振り返ると、右手にシャトルの箱を二ダース持った四盛がいた。


「部屋掃除してたら、運営していたときに預かっていた使い古しのシャトル出てきたから、今日持ってくるので大変ですよ」


そう言いながら少し早歩きでこちらに追いつき、僕らと一緒に並んで歩き始めた。

まだ、紅葉にはなるには大分早いが、しっかりと秋を感じさせる並木道を他愛もない話をしながら三人で歩く。


「そういや、トラさん今日は原付じゃないんですか」


今日の授業の話をしている途中でいきなりそのことについて話し出したので、思わず吹き出しそうになってしまった。

隣で美波がくすくすと笑っている。


「いや、エンジンオイルが無いんだよ。

お前こそ、原付で来てないじゃん」


「シャトル2箱持ってきたら、だいたい分かるでしょう。

原付に乗り切らなかったから電車で来たんですよ」


「あっ、確かに」


三人で笑いながら体育館の入り口を通りロビーへと入った。
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