君を忘れない
そう思いながら歩いていると、結局はいつもの自販機が並んでいる休憩所にたどり着こうとしていた。

自販機があるというのになぜかいつも人が全くと言っていいほどおらず、この病院に来て一ヶ月ちょっと経つがその休憩所で会った人は十人もいない。



案の定、今日も誰一人としてここで休憩している人はいなかった。

地下ということもあるのか病室のエアコンが効いたわざとらしい涼しさと違って、冷んやりとしていて気持ちがいい。



折角、涼しくて気持ちがいいのに病院独特の薬品の臭いが鼻を突く。

何度嗅いでもこの臭いは好きになれない。

しかし、まだ好きになれないと思っているだけいい。

慣れてしまって、何も思わなくなってしまうということだけは絶対になりたくない。



椅子に座って買ったジュースの栓を開けようとすると、財布から小銭を取り出そうとすると、百円玉が地面に転がり落ちてしまった。

慌てて取ろうと腰を下ろそうとした瞬間、右膝の感覚がなくなり転びそうになり前かがみになった。


「きた」
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