結婚式

「……!」

「二人きりだ」

伯爵の声が部屋の中でのみ響く。
誰も干渉してこない。二人だけの空間。

「……愛してる、ジュリア」

ストレート過ぎる言葉。
彼女、ジュリアは身を強張らせ、首を振る。


受け入れてはならない。
伯爵は明日、結婚式を挙げる。


「おやめ下さい……」

拒絶する。だが、そんな言動とは裏腹に、目は彼に釘付けになっている。
目の奥が熱い。視界が滲む。


「私は、ただの……使用人です」

「だが俺の幼なじみだ」

彼の眼はまっすぐ彼女だけを映している。
その視線が、まっすぐすぎて、受け止めきれなかった。


「……俺は、ジュリアが好きだ」


そして、苛立ちさえも胸に芽生える。
雫が、目からこぼれおちる。


ジュリアは彼を睨みつけた。

< 4 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop