結婚式


「私だって……!」

涙がこぼれ落ちる。
ジュリアは涙を散らしながら荒い足取りで歩み寄り、襟をつかむ。


「私だって、アスランの事好きだよ! でも貴方は結婚する!」

「ジュリア……」

目の前の彼が憎かった。


「国の為に貴方は結婚しなくてはならない! この結婚は果たさなくちゃならない!
 分かってくる癖に、そんなこと言わないでよ!」

彼は異国の姫と結婚する。
それは両国の平和の象徴として必要不可欠な結婚。
この結婚を果たす事で初めて戦争は終結すると言ってもいい。

だから、彼は結婚する。
結婚を放棄する事は、平和を放棄する事。
逃げれば、両国から追われる身となる。


分かっているはずなのに、どうして彼はそんなことを言うのか。
それがどうしようもなく腹立たしく、辛すぎる。


「結婚しなさいよ! どうせ私は使用人で貴方は伯爵、最初から私たちは結ばれないの」

「ジュリア……」

身分の違い、国によって決められた結婚。
二つの壁が二人の間に立ちはだかる。その壁は、決して破れない。破ってはいけない壁。


「諦めなさいよ! 私はもう、もう……とっくに諦めてるの!」

彼女の目から、止まることなく涙が溢れる。
ぐっと、アスランは彼女の両手を握る。



「それでも、俺はお前が好きだ」



ああ、どうして……


どうして彼はまっすぐなんだろう


< 5 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop