ペテン師の恋
唇を離すと、朱一は茫然と私の顔を見つめていた。






その顔には、瞳には、今、確かに私が映っているよね。






私は、そんな些細なことでも満足できた。





「おやすみなさい」





私はそういうと、車から降りた。





後ろは振り向かない。





でも、マンション入るまでエンジンの音がしなかったから、きっと、私が入るまでは移動はしてないみたいね。







こんなに気持ちが晴れ晴れしてるのは初めてだ。






恋をするって、こんなにたのしくて、些細なことでも喜びに変えてしまうことなんだね。






今は、何も発展を望んではいないけど、私もいつか、欲望がでてくるのかな。












このとき、私は浮かれていて、何も感じていなかった。






しかし、確かにあの狂気は間違いなく、動き始めていた。






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