神龍の宴 覚醒の春
「…ったく、一緒に起こしてくれてもよさそうなもんなのに」


一卵性双生児の兄、爽は最近やたらと凛に冷たい。
冷たいというよりも、避けられているように思う。

爽は最近、そんなに視力が悪いわけでもないのに眼鏡をかけ始めたり、自分の顔が嫌いだと言ったりしてていた。


それはすなわち、凛の顔にも文句があるということだ。

客観的に見て、兄弟の顔立ちは整っている方だった。
容姿には恵まれた方なのにその顔が嫌いだと爽は言う。


全く凛には訳がわからない。
ベッドの足元に散らかった段ボールを見て、凛はまたまたため息をついた。


今日から、この家に住む人間が二人増える。

別居中の母と生活していた凛の弟が、中学入学を機に戻ることになり、同時に、父親の友人の子がこの家に下宿するのだという。

そのために、凛は今まで使っていた部屋を明け渡し、爽の部屋で一緒に寝起きするはめになった。


今日から新学期、新しいスタートなのに、気が滅入る。


凛は大きく深呼吸すると、気合いを入れてベッドから出た。


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