神龍の宴 覚醒の春
ダイニングには既に、爽の他に、凛達の兄、大学生の開(かい)の姿もあった。


凛は、通いの家政婦が用意してくれていた朝食を一瞥して、薬箱から鎮痛剤を取り出した。



「なんだ。また夢見が悪いのか」


鎮痛剤を水で流し込んでいる凛を見て、経済新聞の影から開が声をかけてきた。
開は有名大学の3回生で、年よりもずいぶん大人びて見える。

株や投資など手広くやっていて、結構な大金を持っているらしい。

開が朝から家にいることは珍しかった。

爽同様、凛にとっては兄弟なのに、よそよそしい感じがする存在だった。


「開が朝からうちにいるなんて、珍しいな」

「今日、末っ子と高原の娘がうちに来るんだろ。末っ子はともかく、高原の娘を空港まで迎えに行けと親父から電話があったんだ」

「えっ。高原さんとこの子って、女の子?」


凛は驚いて目を丸くした。

「今年から日本の学校に通うらしいな。中1だと言ってたから、うちの末っ子と同じだな」


開はまた新聞を開いて、こともなげに言った。


「よりによって、うちは男ばかりなのに、そんな所に女の子?それはちょっと」

「中学生なんだろ?興味ないよ」


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