神龍の宴 覚醒の春
「すまない」


「僕に謝らないでよ。ほんとに」


勢はその幼い顔に不釣り合いなほど大人びた笑みを浮かべて答えた。


「問題は爽と凛だね。今日からホラ、遥都まで一緒だろ?」


「遥都にはもう会ったのか?」


今日から増えるもう一人の同居人について、勢は不安に思う事を吐露した。


「開が迎えに行ってるはずだよ。僕もメールでしかやり取りしてないけど、遥都が凛の覚醒を誘導するかもしれない」


「大人しく静観するよう直接話した方がいいな。開に迎えにやらす前に、つかまえておけばよかったか」


「言うこと聞くようなお嬢さんじゃないでしょ」


勢はあきらめ口調でまた肩をすくめる。


「僕もなるべく監視するつもりだけど。開も相変わらず何考えてるかわかんないし。もしかしたら遥都が凛を覚醒させるかもってこと、爽には伝えとこうと思ってるよ」


「…オオゴトになりそうだな」


暦は唇を噛んで腕を組んだ。


一方、凛はトイレの廊下で真耶子と電話中だった。


「えぇ?今からうちに来たいって?」


『一人じゃないよ。絵美も一緒。テスト勉強しよーよ』


参ったな、と凛は天井を仰ぐ。なんとなく、今日から一つ屋根の下に女の子が暮らすという事を、爽に想いを寄せている真耶子に知られるのはどうかと思っていたのだが。


『って、実はもう凛の家の前なんだ〜』


「えー…俺まだ帰りついてないよ」


『寄り道してないで早く帰って来てよー』


勝手なこと言うなぁ、と呆れたが、モノは考えようで真耶子達がいてくれた方がかえって他に気を取られなくていいのかもしれない。

今日初めて会う少女の事もいずればれるのだろうし、もう最初から紹介しておくかな、と凛はあっさり観念して、


「今出先だから、30分くらいかかるかも。それでもいいわけ?」


『30分くらい待つよー。なんか買ってこうかな。リクエストある?』



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