【完】TEARS−ティアーズ−


うっわぁ……っ!

しっかり目、合ってるよね?



変な汗が背中に流れるのを感じながらも、バッチリあった目は逸らせなくて。

その男の子も無表情のまま、あたしを見下ろしてるだけ。


こんな場所で転んで、
至上最悪なくらいにタイミングも悪くて、

頭の中に色んな言葉を捜してみるけど、コレといった言葉は出てこなくて。



困り果てたあたしは、とりあえずアハッと笑ってみた。



だけど、あたしを見下ろす男の子は笑ってはくれなくて。

ううう。
何であたし笑っちゃったんだろう。


なんて後悔しても遅い。


真顔で見つめる男の子から、目を逸らし、倒れた自転車を猛スピードで起こし、引き攣ってるであろう笑顔をキープしたまま。


ズキンッと痛む足を引きずり、逃げるようにその場を去った。



恥ずかしいっ!!
有り得ないっ!!



いつになく早歩きのあたしは、階段でまた躓いてしまった。
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