《短編》砂山のトンネル
ゆっくり穴を掘り進めながらミキが言った。


「私ね、今度のオーディション落ちたらモデルになる夢諦めるんだ…」

「えっ!?」


俺がミキの言葉に驚いた瞬間だった。


『あっ!!』


二人の言葉が重なったと同時に指先も重なった。


「繋がったね(笑)」


そう言いながらミキはトンネルから腕を引き抜き立ち上がった。

俺は驚きでまだ動けずにいた‥‥


「さ、帰ろ!!」

「おぅ…」


ミキのその言葉に俺も立ち上がった。

家までの100メートルはまた沈黙が続いた。

向かい合った俺らの家。入る前にミキに訪ねた。


「次のオーディションいつなんだ?」


俺の質問にミキは笑顔で言った。


「昨日受けてきた!」


その笑顔はすごく悲しそうでもあって、すべてを受け入れている様でもあった。

俺は“そっか”とだけ返して家に入った。



砂山のトンネル

端と端から通わせた二人の手と手


そんな何ともない事でさえ

あの頃の俺らは、笑顔で称え合ったっけ‥‥



そんな何ともない事が、大げさに言えば

小さな俺らの夢だったのかもしれない。
< 7 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop