春は来ないと、彼が言った。


…肉まんのときみたいに、敢えてわたしにソーダをくれて。

本当はあんまりいちごが好きじゃないくせに。


それで。

わたしが知らない間に会計を済ませたりしちゃってるんだ。

いつも、そうだよね。


恢って本当にかっこよすぎるんだよ、ばか。



「…………ほんと、ばか…」



歪み始めた視界に溜息を吐いて、唇をきつくきつく噛み締めた。

幸い、涙は流れなかった。
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