春は来ないと、彼が言った。
自分の掌がじわじわ汗ばんでいく。
今までのとは違う。
嫌な汗じゃなくて。
「(…わたし…緊張、してるんだ…)」
気付いた途端、その緊張が羞恥に変わった。
恢はどうせなんとも思ってないのに、わたしばっかりこんな気持ちでいて。
虚しいよりも、恥ずかしいの方が強い。
どこを見ればいいのかわからなくて視線をうようよとさせていたら、赤いものが目に留まった。
恢の耳、だ。
えっ…真っ赤…だよね…?