春は来ないと、彼が言った。
哀しい瞳
*****



「はーなーちゃーん」



それは、最後の授業である6時間目の授業が終わったときのこと。


にまにまと頬を緩めた睦くんに呼び止められた。

ちょうどお手洗いの帰り道、廊下にはまばらにしか生徒の姿が見えない。



「どうしたの?睦くん」



そのこらえきれてない笑み……なんだかとっても楽しそう。


不思議に思って首を傾げると、睦くんはすっとわたしの目の前に紙を差し出した。



桜の形をした、和紙のメモ。


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