春は来ないと、彼が言った。
ひどく苦しそうで切なそうで、それから少しの孤独を孕んでいた。
「―――――っ…」
息を呑む。
酸素を上手く取り込むことができない、窮屈で圧迫感のある静寂。
瞬きさえ忘れて、わたしは恢だけをじっと見つめていた。
恢の口が重たそうに開く。
「……もう、俺に関わるな」
カラカラ……ピシャン。
扉の閉まる音を最後に、世界は静まり還った。
わたしの嗚咽だけを無残に残して。
首筋に残った熱が、虚しく疼いた。