シュガー × シュガー





「どうすか?最近教習は」


あたしの顔を覗き込む西野先生。

後ろにのけ反りそうになりながらも
あたしは必死に笑った。


笑顔、引き攣ってたかも。



「すごく楽しいですよ。先生方、面白いし教えるの上手いし」

さすがに、カッコイイしとは言えなかった。


先生は
ハハッて笑った。



「俺は正直驚きましたよ、君に」


…えっ?
君にって君って…あたし!?


「なっなんで、ですか?」


「こんな可愛い子がMTなんだもん(笑)」


か…可愛い子。

教官って
こんなことあっさり言えちゃうんだ。


正直、お世辞と言うのは
あたしにだってわかる。

というか、誰にでも言ってる
安い言葉なんだろう。


とりあえず、受け答えは流した。



「彼氏は?いるだろ?ラブラブか?」

悪戯っ子みたいな顔で聞いてくる先生が、可愛くて可愛くて。

今この時間が、どんなに幸せだろう。


でも…残念ながら

「彼氏は…いないんです」


言葉に出すと、なんとも虚しい事実。


すると先生は
あたしが握る携帯を指差して

「ここには男のアドレス、いくつあるのかねえ(笑)相当あるでしょ!」


この人は…。


「微妙です(笑)虚しいのであまり言いません(笑)」



さすがに彼氏いないってことは
信じてもらえたらしい。




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