時空の森と悪戯な風

家に、どうやって帰ってきたのか、全く分からなかった。



分かっている事は、今のアタシには、生きる気力が無い事だけだった。






父は言った。



『弥生の幸せを願ってる』と。





智治も言った。



『弥生の幸せが俺の幸せだから』と。





アタシの幸せは何?



もう答えは出ていた。





『自分の気持ちに正直になりなさい』




お父さん…

これがアタシの

正直な気持ちなの…






ハンカチの中から、さっき拾ってきた桜の花びらを、ベッドの上に撒き散らした。



そして、小箱から智治の写真を取り出すと、そっとキスをした。



「智治…アナタは怒るかもしれない。でも、これがアタシの答えなの…」






大量の薬を飲み、花びらいっぱいのベッドに倒れた。






そして…


そのまま深い、深い眠りについた。





< 68 / 92 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop