うらばなし


私は人間を溺愛しているからね。あの“人間らしかった君”は見ていて、ときめきさえ覚えたよ。

それと同時に安心した。内に物事を溜めた君も吐き出せるのだと知って。苦悩、悲嘆は内に秘めてばかりではいつかパンクするからね、私はそれを見透かすが見透かして知るところで、君自身が吐き出さねばガス抜きにはならない。

安心、安心だよ。君とはそれなりの縁ができたからね、その君のドロドロとした中身を見透かしながら何もしない――あえて、何もしなかったが、君はきちんと心の拠り所をそばに置けたのを見て、ああ、これで君はまた明日を快く迎えられると、鳥が巣立つ瞬間に立ち会えたようにホッとしたものだ。


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