うらばなし


「確かに、誰も赤ん坊の時は覚えてませんよね」


“気づいたらそうだった”とは、そのままの意味。歳を取らなくなり、周りがどんどん老いていくのに自分だけは変わらない。それを何回も何度も繰り返す内に、『僕はこうなんだ』とやっと気づいたのでしょう。


回り続ける歯車みたいなもの、“最初からそうなっていた”。永久的に活動できる彼ですが決して作らされたわけではない、あくまでも、さざめきの“体質”の話なんですが……


「さざめきさんも苦労なさっていますね。周りが次々と死んでいくだなんて」


だからこそ彼は医学の道に進みました。自分と同じではないにせよ、せめて『長生き』をさせたい。床に伏す老いた友を死なせたくありませんでしたが、そんなことを今まで繰り返す内に、『無意味』だと気づいたでしょうね。


生きれば死ぬ。
そんな常識にあらがったって、屍はどんどん増えるだけ。逆に自身の都合で存命させた友が“苦しみ抜いて死んだんじゃないか”とも思い始めれば、“無駄なあがき”はできないことでしょう。


< 530 / 1,773 >

この作品をシェア

pagetop